日本の民家 一九五五年 展

  

私たちは経済的な豊かさと引きかえに、美の心を失う必要はなかったと思うのだけれども。

これはGA出版の『日本の民家』新版に書かれた「後記」の、伊藤ていじ氏の一文である。私たちは、本当に必要であるかどうか分からない「経済的豊かさ」のために、どれだけ多くのものを失ったことだろう。そして多くの人々が、失ったものが何かさえも考えないような、そんな時代になってしまったのではないかと、深く心を痛めることがある。

それはさておき、汐留にある「パナソニック汐留ミュージアム」 http://panasonic.co.jp/es/museum/で開催される、「二川幸夫・建築写真の原点」を見る写真展。「和風通信」の「和風ニュースhttp://wafutsushin.com/news/2012/12/15/2130-39/ に詳しく紹介されているので、展覧会の案内は、汐留ミュージアムと上記ホームページを参照されたい。

「日本の民家」は二川幸夫氏の写真と伊藤ていじ氏のテキストで構成されていて、最初は美術出版から10冊のシリーズものとして出版され、その後1冊にまとめられたようだが、二川幸夫氏のGA出版http://www.ga-ada.co.jp/japanese/index.htmlが1980年に出した「新版」が手元にある。「新版」にはカラー写真と図面が加えられていて見ごたえが有るが、何といっても二川幸夫氏の写真が心を打つ。勿論そこに映し出されているのが、「民家」と言う文化の基盤となる建物群であることがそうさせるのだが。

妻有アートトリエンナーレの「空家プロジェクトhttp://tsumari-artfield.com/akiya/project/を見るまでもなく、「民家」の存在はほぼ実態のないものになりつつある、と言うか、ほぼ実態が無くなってきているのではないだろうか。経済的なシステムがそうさせるところが強いので、「民家」が消えていくという現実を押しとどめることは難しいかもしれないが、このまま「文化」としての美しい「民家」が、消えていくのをただ呆然と見過ごして良いわけでもないと思う、が、ではどうするのか・・・。

少なくとも、まず「知ること」が第一歩ではないかと思う、展覧会で「美しい民家」を知ることは、比較的容易なことである、まず見に行こう。そして少し興味がわけば、実際にまだ生き残っている「民家」を見に行こう、そこまではチョットした意思で可能だ、インターネットばかりにしがみつかずに、まずは外に出て、実態に触れてみることが必要だろう。

会場:パナソニック汐留ミュージアム http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/13/130112/index.html

日程:2013年1月12日(土)〜2013年3月24日(日)

時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

入場料:一般700円 他

■アートディレクション:細谷巌 http://www.lightpublicity.co.jp/company/information/hosoya.html

■会場構成:藤本壮介

  

  

  

  

 

郵政省の埼玉新都心庁舎を担当した時に、完成写真の撮影を「GAphotographers」に依頼した。完成写真撮影業者は設計担当者が選んで特記仕様書に記入するが、「業者」と言う名称がすでに、「どうなのだろう?」と言う感じだが、現実は厳しく、名のあるカメラマンに撮影を依頼することは、即予算に跳ね返るのでかなり難しい・・・。予算の少ない小規模の物件では完成写真に予算を余り使えないので、いわゆる「業者」さんにお願いすることになるが、その時は撮影前に十分打合せ、撮影当日に立ち合ってしつこく付きまとって、あれこれ注文を付ける、とても嫌がられていると思うが、建築は持ち運べないので、写真は極めて重要な伝達媒体なので、決して緩むわけにはいかない。「GAphotographers」に依頼しても、二川幸夫さんが撮影してくれるわけではない(著名な建築家の作品は自ら撮影するのだろうが)、そのようなシステムになっていないのかもしれない、撮影してくれたのは高田さんと言うカメラマンで、その後一度偶然三軒茶屋でお会いしたが・・・。他の著名な写真家に完成写真を撮影してもらったこともあるが、良くてワンカットかツーカットぐらい自分でシャッターを切るが、他は助手さんが撮影する、唯一例外は門馬金昭さん http://www.yoshimurajunzo.jp/、以前芸大で開催された大規模な吉村順三展 http://d.hatena.ne.jp/udf/20051110  http://udf.blog2.fc2.com/blog-entry-111.html のポスターになった軽井沢の山荘を撮影した写真家で、郵政の建物も数多く撮影して頂いたが、すべてご自分で撮影されていた。あの有名な写真は、霧がかかったように撮影されているが、発煙筒をたいたんだよ、と話されていたのが印象的だった。

  

GAphotographers撮影のさいたま新都心郵政庁舎


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