新国立競技場コンペ
新国立競技場コンペ、ザハ・ハディド氏が1等に
『「いちばん」をつくろう。』と言うコピーではじまるコンペは、ザハ・ハディド氏の案が「いちばん」になりました。コンペ主催者のホームページには「もう一度、上を向いて生きる国に」と言う、間違いなく躓いてこけてしまいそうな言葉もありました。何よりもびっくりするのは、「そのプロセスには、市民誰もが参加できるようにしたい」と言いながら、ファイナリスト11グループ以外の、敗れ去った35作品について公表されているのかいないのか、いろいろ探してみても分からない、「闇の中」と言う審査経過です。
このコンペについては、要綱に見られる閉鎖性(応募資格を見れば「オープンコンペ」ではなくほとんど「指名コンペ」と言えるようです)、また、募集期間が短かったことにも疑問がもたれているようです。IOCに提出する「立候補ファイル」に、日本人ではない設計者の派手な施設の「絵」が欲しかっただけではないかと、ネットで批判されていることもうなずけます(基本設計、実施設計者は今後公募型プロポーザルで決定するようです、もしそうならビックリです)。
高校の冬の体育の授業は絵画館の周りを走るのが定番でした。緑が多くとても「しっとり」とした良い場所ですが、そこにあの異様な風体の構築物は不似合いです。審査委員長はどうも東京に愛着はないように思えます。
「いちばん」をつくろうと切りだすコンペの主体は、何となく「にばんではいけないのですか?」と言う発想を打ちのめしたいのではないかと、思ってしまいます・・・。コンペ敷地内にある集会のメッカ明治公園も、勿論つぶすことにしています。
ネットでは、日本における建築の存在感の小ささを危惧し、「奇しくも、コンペの最優秀案を報じた朝日新聞の大阪本社版の社会面の記事は、国家的プロジェクトとは思えぬほどの小さな扱いで、隣接した大阪桐蔭高校の藤浪投手の阪神入団を報じる記事のほうがはるかに大きかったことは、こうした懸念を極めて端的に物語るものとして大変印象的であった。」と言う声もありました。
久しぶりの国の大規模コンペなので、いろいろ期待するところが有りましたが、何となく後味の悪いコンペになってしまったようです。
建築を志す学生も減少し、「建築学科」と言う言葉も避けられつつあるようです。以前、「室内」と言う雑誌で(確か・・・)「死語累々」と言う、使われなくなった建築に関する言葉を解説する連載が有りましたが、「建築」そのものが仲間入りしないことを願い、新国立競技場が市民から親しまれるものとなることを期待したいと思います。
新国立競技場公式サイト⇒http://www.jpnsport.com/NNSJ.html
ちなみに、個人的には「SANAA」案、あるいは古墳案と言われている「DOREL。GHOTMEH。TANE」案あたりが良いのではと思いますが・・・。(その後、一時審査で落とされた作品を見ることが出来るようになりましたが、古墳案に近い坂茂氏のものが良いように思います。「DOREL・・・」の案は道路際がコンクリートの壁として立ち上がっているところが、評価できないようです。一番良いのは、後で明らかになった、久米設計がJSCから(?)依頼を受けて作成した、既存の競技場を改修して使う案だったようです。しかし、すでに競技場は解体されてしまった!2015.05.24)
以下、ファイナリスト11作品(詳細は上記公式ページ参照)
1 コックス・アーキテクチャー ピーティーワイ エルティディ 2 ポピュラス 3 ユーエヌスタジオ/ヤマシタセッケイ 4 ザハ・ハディド アーキテクト 5 タバンルオールー・アーキッテクトス・コンサルタンシー・リミッティド・カンパニー 6 ドレルゴットメ・タネ/アーシテクト & アー+アーシテクチゥール 7 梓設計 8 伊東豊雄建築設計事務所 9 SANAA + 日建設計 10 ゲーエムペー・インターナツィオナル・ゲーエムベーハー 11 環境デザイン研究所
2月4日付東京新聞の「山手面」に、「国立競技場建て替え機に、神宮外苑地区 高さ制限75メートルに緩和」と言う記事が大きく載っていた。「緑の多い風致地区のため、現在の高さ制限は15メートル」、地区計画を見ると国立競技場と関係のない部分が広く含まれていて、絵画館前の銀杏並木の景観は風前のともしびと言う感じになっている。誰のための緩和か、有楽町から大手町にいたる開発がほぼ一段落した今、緑豊かな都心の貴重な地区が狙われたと言うことだろうが、ディベロッパーにしても建設業界にしても、もっと他に生きる道を探るべきではないだろうか。このままではこの業界は、とうてい市民からリスペクトされることはないのではないだろうか。
※※※ 現地を知っていればすぐ分かることだが、南にある大きな広場は明らかに計画ミスではないだろうか。メインのアプローチはJRと都営地下鉄の駅のある千駄ヶ谷(敷地の北側)方面と考えるのが普通ではないか。そちらに大きな広場が無ければ、8万人の観客はさばけない。原発に反対する大規模集会(6万人規模)が明治公園で行われた時、すでに千駄ヶ谷駅はホームに人があふれ、次の信濃町駅まで行き、そこから多くの参加者がアプローチしている。南側は地下鉄銀座線の外苑前駅からのアプローチになるが、半蔵門線では外苑前駅は造られず、表参道駅の次は青山一丁目駅である。つまり南側からのアプローチとなる外苑前駅は大人数の利用は考えられていないわけで、ホームも極めて狭い、そのように条件の悪い南側に大規模な広場を配置するということは、敷地の条件など全く眼中にない、ただ目立つだけのために造った絵空事、と言うことではないだろうか。もしかすると敷地を見ていないか、交通条件等を熟知していないのではないかと思わざるを得ない。
2013.03.01 追記
明治神宮外苑周辺の規制緩和に反対する。都民に残された数少ない都心の緑を、一部の利権をむさぼる者のために失ってはならない。神宮外苑が整備された当時の状況を取材した東京新聞(2013.02.27付)の記事を転載する。
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- Published:
- 2.10.13 / 5pm
- Category:
- 建築
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