国立近現代建築資料館

 

建築関係者からは長らく設立を待ち望まれた建築そのものに関連した施設が設立されたが、それが「近現代建築資料館」と言うのはどうしたことだろう。建築を総合的に捉えたMuseumでないというところが、どうも施設設立の意味合いが良く分からない。

設立主旨は以下のようになっている

我が国の近現代建築は、世界の文化芸術の重要な一翼を担う存在となっていますが、これまでその学術的、歴史的、芸術的価値を次世代に継承する体制が十分ではありませんでした。そこで当館では、我が国の近現代建築に関する資料(図面や模型等)について、劣化、散逸、海外への流出等を防ぐことを目的として、全国的な所在状況の調査、関連資料を持つ機関(大学等)との連携、緊急に保護が必要な資料の収集・保管を行います。また、展示や普及活動を通じ、近現代建築とその関係資料に対する国民の理解増進を図ってまいります。

とりあえず資料の散逸を防ぎ、一箇所に集めようと言うことだと思うが、まあ、それはそれでひとつの前進と言うことになるのだろうが、一番重要なことは、近現代建築を「不動産」と言う観点からだけで、むやみと解体し続けるシステムを変えて、近現代建築そのものを有効活用していくようにすることではないのだろうか。東京及びその周辺の近代建築は横浜や一部開発の波に飲み込まれず、「偶然」残った一部を除き、ほぼ壊滅状態にある。そして今や1950年代以降の現代建築の解体に手が付けられ始めている。吉田鉄郎氏、前川國男氏、坂倉準三氏、吉村順三氏、白井晟一氏、村野藤吾氏、菊竹清訓氏・・・、あげたら枚挙に暇がない。とりわけ様式主義的な「一般受け」することが余りない近現代建築はひとたまりもない。最近では首都圏をはじめ、大規模な開発を行う土地がなくなりつつあるため、地価の高い都心にある現代建築はまず残すことが難しい、と言うのが現状ではないだろうか。

よく建物の保存の変わりに、記録保存という手法がとられることが多いが、その手法の公の拠点がこの国立の資料館にならないことを願うが、どうだろうか。

名誉館長が安藤忠雄氏で、設立の実質的な準備は鈴木博之氏、どこかで見た顔ぶれだが、東京国立競技場コンペの審査員でとんでもないザハ氏の案を当選させた面々で、権威に滅茶苦茶迎合する顔ぶれのように思えなくもない。安藤忠雄氏は「在野の建築家」と言うイメージが一般的には浸透しているようだが、今そう思っている建築関係者はまず居ないのではないだろうか。

建築資料館の話しが、特定の建築家への批判になってはいけないので、ここまでとして、オープニング展示が現在行われている、テーマは「建築資料に見る東京オリンピック」。これはもう建築資料館というよりは、「国立建設業界館」ではないか?

とにかく作った以上は建築文化に大いに寄与してもらえるよう、頑張ってもらいたい。

■会場:国立近現代建築資料館 http://www.bunka.go.jp/bijutsukan_hakubutsukan/shiryokan/index.html

■日程:2013年5月8日(水)〜2013年6月14日(金)

■時間:9:30~16:30

■入場無料(資料館だけの入場はHPからの事前申込が必要:旧岩崎邸庭園からの入場は予約なしでも可能だがその場合庭園の入場料400円が必要)

 

※東京オリンピック関連展示

東京国立近代美術館 ギャラリー4

■会場:国立近代美術館 http://www.momat.go.jp/Honkan/1964/index.html

■日程:2013年2月13日(水)〜2013年5月26日(日)

■時間:10:00~17:00

■入場料:420円

 

 

 


About this entry